コロナ禍での気候変動を起因とする災害対応支援事業の実行団体インタビュー
災害時に被災者支援で立ち上げた組織が、コロナによる生活困窮者支援も行う。老若男女が交流するイベントや地域に憩いの場も提供。
令和元年8月の佐賀豪雨災害を機に被災者支援のために立ち上がった一般社団法人おもやい(佐賀県武雄市北方町、2020年3月19日設立)は、運営資金として佐賀災害支援プラットフォームによる休眠預金を利用しました。
地域の交流の場も提供している同法人は、なぜ佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)による休眠預金を申請したのか。
代表理事 鈴木隆太さんに伺いました。
「おもやい」は、どういう団体なのですか。
おもやいは、令和元年8月の佐賀豪雨災害を機に武雄市民と民間ボランティア団体が声を掛け合い、被災者のサポートをすべく立ち上がった団体です。
地元住民が中心になってボランティアをしたり、県外から来てくれるNPO団体と連携をしたりしながら、その時々で必要なことを被災者に提供してきました。
平時の現在は、年に一回、防災グッズを被災された方々にお配りしたり川が増水する「出水期」前に賞味期限のある非常食を配布したりして入れ替えをする活動を行っています。
また、災害以外にもコロナの影響によって、生活が苦しいという方からの相談を受けることも増えてきたので、現在は、
- 家の修繕や片付け
- お弁当の配送
- 弁護士や建築士の方に依頼して、講習会や相談会の実施
なども行っています。
「安心して住み続けられる街」を心がけて活動をしています。
なぜ休眠預金(佐賀災害支援プラットフォーム)の支援を受けようと思ったのですか。
今まで私達は、事務所を転々としながら活動を続けてきましたが、現在の拠点を持つ前に借りていた事務所が水害の被害を受け、取り壊しが決定しました。
そのタイミングで「安定した活動を行うためには、きちんとした拠点を確保するのが良いのではないか」となったのが一番大きい理由ですね。
それで、支援していただける団体を探している際に、佐賀災害支援プラットフォームさんを見つけたんです。
募集要項の欄の一番上に「拠点を整備する」というものが挙げられていたのを見て「私達にぴったりではないか」となり申請させていただきました。
休眠預金を活用して、実際にどのようなことができましたか。
現在使用している拠点を整備させていただいたという点が一番大きなところですね。
この拠点自体もまさに、水害を受ける可能性のあるエリアの真ん中にあるのですが、被害を受けたとしても最小限にできるような整備をさせていただきました。
また、毎月1回「オープンデー」という形で映画の上映会やヨガ教室など、有事以外でもさまざまな形で使ってくださる施設になっています。
今まで地域にはこのような場所がなかったので、住民の方が何の気なしに来られる親しみやすい場所になっています。
正直、僕一人が旗を振って団体を率いていると見えない部分もあって、取り残される人が必ず出てきてしまうと思うんです。
ただ、こうやって多くの方が関わってくださることで、私一人では見えなかった視点で物事が進むこともあるので「誰一人取り残さない」という仕組みにできています。
今回の休眠預金のおかげで、被災者に「防災あんしんセット」という非常食のセットを新規200世帯へ配布することもできました。
また、地域の方や市外の方からの支援で集まった食料や生活用品の配布会を開くことができました。
配布会を実施する度に認知度が高まっているので、少しずつ利用世帯が増加しています。
活動拠点「そよぎ」は有事の際にどのような活動ができるのですか。
大きい広間があるので、そこを多目的に使えるように確保しています。
例えば、令和3年の水害の際には、NPO団体や災害対応をする技術をもって駆けつけてくれた団体さんの現地拠点に加え、被災された方の相談やニーズを聞く場所として使用しました。
また、木材や救援物資などを置く場所としても使用しています。
令和元年の災害時にアンケートを取ると、家を修繕するのに500万円程度かかるという家庭もありました。
家の修繕に加えて、家財道具や車を考えると1,000万円や2,000万円はすぐにかかってしまいます。
拠点から木材や救援物資などを支給して、できるだけ買わないといけないものを減らすような支援ができればと思っています。
今後はどのような活動をしていきたいと思っていますか。
これまで行ってきた活動の認知を広げて、支援してくださる方や直接活動に関わってくださる方の輪を広げていきたいと思っています。
支援という形で私達がやっている一方的な取り組みも、当事者の方達に支えられるからこそ成り立っていると感じているからです。
例えば、被災して復旧作業で今も大変な方や食料配布を利用してくれている世帯の高校生が一緒になって、イベント開催時に料理を作ってくれています。
料理のイベントも地域の方の声から始まったんですけど、それぞれが持っている思いや願いを地域の中で叶えられるような場所や団体になればいいなと思っています。
あまり難しく考えず、子供から年配の方まで周りに共感していただける活動や場作りをしていきたいです。
あとは、お金がないと活動も続けていけないので、収益事業も考えています。
防災講座のイベント企画はもちろん、防災グッズの商品開発なんかもしていければと思っています。