コロナ禍での気候変動を起因とする災害対応支援事業の実行団体インタビュー
県内に2カ所のストックヤード設置と災害時に役立つICTの基盤を整備
災害対策は「継続」がキーワード
佐賀県社会福祉協議会は、2020年度に佐賀災害支援プラットフォームさんの支援を受けて、災害ボランティアのためのストックヤードの設置や、ICTを活用した災害ボランティアセンター運営のための基盤整備を実現しました。
支援を受けて、地域が抱えていた災害支援に関する課題にどのように取り組んだのか、同協議会の小松美佳さんにお話を伺いました。
佐賀県社会福祉協議会とはどのような団体なのか、活動内容なども含めて教えてください。
佐賀県社会福祉協議会は、社会福祉法で規定されている民間の団体です。
公務員とよく間違えられるのですが、社会福祉法人という民間の法人格を持っています。
全国の市町に設置されている社会福祉協議会(以降社協)さんや民生委員さん、老人ホームや保育所などの社会福祉施設、ボランティアさんや各種NPO団体などと協働して、地域福祉を進めている組織です。
主な仕事は、地域の生活困難者を支援している市町の社協さんや民生委員さんたちの後方支援です。
最終的には、県民の皆さんが、住み慣れた町で安心して健康的に暮らせるような地域作りを目指しています。
阪神大震災後は、災害によって突然生活困難者になってしまった方たちを支援するための、災害ボランティアセンターも立ち上げました。
そこでも、災害ボランティアとして住民の方たちを直接支援するのは市町の社協さんたちなので、私たちはセンターの運営支援をしながら、社協さんをバックアップしています。
市町の社協さんは地域内のつなぎ役という役割がありますが、私たちは県域や県外の市町の社協さんと住民をつないでいくという立場です。
市町の社協さんの困りごとにフォーカスして支援するので、コミュニケーション力が必須な仕事です。
他には、市町の社協さんたちの力量向上を目的とした研修や、目線合わせのための情報共有会議なども開いています。
高齢者や障害者の金銭管理をサポートする支援や、コロナ禍で生活に困窮してしまった方たちへの生活福祉資金の貸付業務など、国の制度が現場に行き渡るための支援も、社協さんと協働で行っています。
今回、佐賀災害支援プラットフォームの休眠預金の支援を受けた理由を教えてください。
令和3年度に佐賀で災害が発生した際、県内に3カ所の災害ボランティアセンターを設置しました。
その際に、コロナ禍の支援ということもあり、課題として感じたことが2点ありました。
一つ目は、発災してすぐに集まる必要な資機材のストックヤードがなかったということです。
各市町の社協や県社協が保有している資機材は多少ありましたが、発災箇所が複数になった場合に、十分足りるだけの量を保有していませんでした。
もっと資機材の数を確保しておく必要があるということになったのです。
もうひとつは、災害ボランティアセンターの運営者不足を解消するために導入した、ICTの整備を進める必要が出てきたということです。
コロナ禍で県外からの移動が厳しかったために県外の社協さんの応援が見込めず、私たち県社協と県内の市町の社協さんだけでボランティアセンターを運営しなければなりませんでした。
しかし、先ほどお話したコロナによる生活困窮者への貸付業務の仕事もあり、災害ボランティアセンターに来てもらえる市町の社協賛の人数が限られていました。
そこで、ICTに頼れるところは頼ろうということになり、サイボウズさんのKintoneを導入したのです。
当時は、災害時だけの保証ライセンスとして、令和4年度3月まで無償で使わせていただいていました。
ところが、今後も起こりうる災害に対し、平時から利用できるような体制を引き続き作っておく必要があるということになったのです。
この2つの解決に取り組んでいこうとしていたところ、令和3年度の発災のときに協働して活動していただいたSPF(佐賀災害支援プラットフォーム)さんと、佐賀未来創造基金さんの代表を務めている山田様からご紹介いただきました。
SPFさんとは、令和元年の災害のときに初めて協働で支援活動をしました。
その後も県・県社協・SPFさんの3者で平時から連携をとり、令和2年度および3年度の発災時にもそれぞれの役割を分担しながら災害支援に取り組んでいます。
私たちの活動を十分に分かってくださっているSPFさんが窓口になっていたため、申請しやすかったというのも理由です。
休眠預金を活用して実現できた取り組みなどについて教えてください。
まず、ストックヤードの管理体制整備事業として、鳥栖市内と大町町にストックヤードを設置しました。
鳥栖市内の敷地は社会福祉法人若楠さんの土地を提供してもらい、3台のコンテナを設置して鳥栖BASEとしました。
これには、地域の社会福祉法人さんの力を借りることで、ネットワークづくりをしたい目的もあります。
災害発生時には、県社協だけでなく、鳥栖市社協さん・鳥栖市役所さん・市民活動ネットワークさんなどにも協力していただいて資機材を運んでもらいたいと思ったのです。
そのために、平時から地域福祉活動などに協力していただきながら、鳥栖市域のネットワーク強化を見込んだ体制づくりをしていきました。
一方、大町町の方は、日本レスキュー協会さんにご協力いただき、4台あるコンテナのうち3台をお借りしました。
こちらには、九州ブロックの社協が預かっている資機材を保管しています。
このときは、「資機材運搬プロジェクト」と銘打って、ライオンズクラブさんや市町の社協さん、SPFさんなどの企業さんたちにも声がけをして荷物を運び入れてもらいました。
大町町の方では、すでに既存のネットワークができていたので、引き続き災害時の協力をお願いしています。
もうひとつの取り組みは、Kintoneを活用した災害ボランティアセンターの基盤整備です。
県社協として有償アカウントを26アカウント契約し、20カ所の市町の社協に付与して共有して使えるように整備しました。
このシステムでは、ボランティアの事前登録や活動仮予約ができるようになっています。これまで県社協や県庁の職員が対応していましたが、ボランティアさんが自分で登録できるようになりました。
また、支援を必要としている住民の方の自宅の状況を撮影し、困っていることを視覚化して共有できるようになったので、ボランティア活動の準備をより具体的に無駄なくできるようになったのも大きな成果です。
ハザードマップと連携させて、支援の進捗状況を確認できるようにもなりました。
また、資機材の管理アプリも作成して、保管している資機材を写真付きで管理しています。
資機材を借りたいという人に専用フォームで申し込んでもらうことで、在庫状況や貸出状況などを管理できる仕組みを整えました。
災害時にしっかりKintoneを活用できるよう、社協職員向けの研修会も月に2回開催しています。
使い方に慣れてもらうために、会議の資料やお知らせ事項などを載せる情報共有スペースを作り、平時から職員の皆さんに触ってもらえるようにしています。
これからやってみたいことを教えてください。
現在、物価高騰の影響もあり、重要な資機材を十分整備できていません。
ですので、今後もさまざまな助成事業などを活用しながら、追加で整備していかなければと考えています。
鳥栖市で作ったネットワークも継続させていきたいです。
ちょうど、鳥栖市社協・鳥栖市役所・NPO法人の三者で災害時の連携協定が結ばれたので、そのネットワーク会議に参加させていただきながら継続を図っていきたいと思っています。
Kintoneの活用についても、若い人たちだけに任せるのではなく、全ての年齢の職員に使い慣れてもらうために、これからも引き続き勉強会を開催していきたいと考えています。