日本野鳥の会 佐賀県支部は、愛鳥の心や野鳥の保護を多くの人に伝えていくために設立され、バードウォッチングや干潟の野鳥保護活動をしています。絶滅に瀕した鳥を守るべく、具体的にどの様な課題を感じて活動をしているのでしょうか。代表の宮原 明幸さん(以下、宮原さん)に伺いました。
◇人間の生活環境によって住処を追われる野鳥
高度経済成長期の時代に、人間が川を水路にしたりコンクリートで埋め立てたことによって、これまで中洲や河川敷で営巣していた野鳥が住処を追われることになりました。
また、生活環境を優先したり確実な農作物の収穫を優先した結果、除草剤や農薬が多く用いられ、鳥の餌となる虫が減少して生態系のバランスが崩れていったのだといいます。
「会員として入会した当初に比べて、確実に鳥の数が減少していると感じています。」と代表の宮原さんもその深刻さを伝えます。
日本野鳥の会を構成する会員のほとんどは鳥に興味があり、その愛着心を持って参加している人が多いため、最初はバードウォッチングが主な活動でした。しかし、近年は絶滅に瀕する野鳥の保護のための活動もしています。
◇”幻の鳥”にしないために続ける繁殖地の保全活動
現在の厳しい環境ではいずれ絶滅することが確実になっている鳥の数は少なくありません。そのような状況においても、鳥の繁殖時だけでも保護をすることができれば少しでも長く生きることができるのではないか、との思いで日本野鳥の会 佐賀県支部では保全活動をしています。
例えば今年は絶滅危惧種「コアジサシ」の営巣地をつくり、その四方に空から来るカラスや猫から守るためのフェンスと網を設置しました。さらに、支部のスタッフによる見張りを毎日行ったようです。
「無事に巣立った姿を目にした時には自分ごとのように嬉しい気持ちになりました」と笑顔で話す宮原さん。その様子からは鳥への思いが伝わってきました。
また、「ブッポウソウ」の繁殖促進のために佐賀市大和町では、子どもたちと巣箱を作成して山の中に設置する等の取り組みも実施しました。
◇進む会員の高齢化、保護活動の資金ー地域で鳥が住める環境づくりをしたい
幼少期から自然にかかわらずに過ごす現代の若者たち。鳥に対して傍観する意識で留まってしまい「きれい」「かわいい」の先の保護活動への興味関心が薄れています。
中には小学校の先生さえも知識が無いために授業で触れられないことも。
このままでは、自然の理解不足が加速する一方だと宮原さんは危機感を持っています。
同時に会員の構成メンバーも高齢化が進んでおり、後世への担い手に対する不安を感じているといいます。「このままでは、見たことの無い鳥が益々増えていくことになるでしょう。
佐賀県の鳥であるカササギ(カチガラス)もその1つです。」と必死に話す宮原さん。
そして、野鳥の繁殖地や生息地の保全のためには少額では実施することができず資金が必須です。地域をはじめ、社会全体で各々が保護活動に対する必要性を感じてもらうことで、活動継続のための資金を集めていきたいと宮原さんは考えています。
自然に囲まれた佐賀の地に住む私たちにできることを考えて行動にしていきたいですね。