わん子の家(神埼市)は2019年に活動を始めて以来、親子やお年寄りの居場所づくりをしながら、子育てや不登校の相談に乗っています。心理カウンセラーであり代表を務める藤田さんにお話しをしていただきました。

わん子の家が主催する居場所づくり「のんびりサロン」は多世代の交流を生み、不登校の親の会「のんびりcafe」は同じ境遇の方同士でつながりができています。大人をメンタルケアしつつ、子どもたちには昔ながらの遊びを実践。このスタイルは「親子のためにやりたかった」と藤田さんが話すように、双方のストレスをやわらげるひとときをつくりだしています。ゴム鉄砲や竹でつくるおもちゃ、段ボール製ジェットコースターなど、手づくりで楽しむ昔遊びは、子どもたちから大変な人気と伺いました。

活動を始める以前から、不登校の相談を受け付けたりワークショップを実施したり、身近な方たちに耳を傾けてきた藤田さん。また、依頼を受けて神埼市内や有田町で心理学講座を開催するなど、県内各地で活躍されてきました。ご自身も過去にうつを経験され、お子さんが不登校となったこともあるそうです。その一つ一つを乗り越えてきた経験を活かし、現在悩んでいる方たちの手助けとなる活動をしています。ちなみに『わん子の家』の名前は、神埼市犬の目(いぬのめ)地区から取ったもの。

「家族関係は母親が軸。母親が笑顔でいられるように」と話す藤田さんは、子育てをがんばりすぎず人の手を借りてほしい、と話します。聞けば真面目な母親ほど『自分がやらなきゃ』と思って無茶をしがちなのだとか。「でも父親にフォローを求めすぎると、かえって気持ちが離れてしまい逆効果となることもある。それよりも周りに目を向けて」と、コツを教えてくれました。藤田さんは「時間を自分のために使っていい。お金かけて子どもを預けてもいい」と話し、そうした自己投資が凝り固まった気持ちをほぐし、物事の循環をよくするのだそうです。

核家族化が進み、孤立することも多い子育て。藤田さん自身も「実家を頼って乗り切りました」と言い、母親が気持ちに余裕を持つためにも、誰かを頼ったり地域のファミリーサポートセンターを使ったりしてほしい、と訴えています。子どもが不登校になっても「昔は学校に行かせたけど、今は違う。フリースクールなど違うかたちもあります」と話す藤田さんの口調は優しく穏やかで、すーっと頭に入ってきます。取材スタッフはまるで自分の話を聞いてもらいに来たような感覚になりました。

藤田さんの特徴的な活動に、子ども向け心理学講座があります。人間関係に悩みを抱えるのは大人だけではありません。むしろ経験値の少ない子どもたちのほうが、外から受けるダメージは大きく、またそのようなシチュエーションに遭遇する回数も多いのではないでしょうか。

自身も「もっと早くから知っていたらよかった」と言う藤田さんは、わかりやすい紙芝居形式で丁寧に、コミュニケーションの取り方や考え方の工夫を伝えています。他にも、やりたいことや夢を、親子それぞれが考え発表する機会を設けるなど、心の内側から元気になる活動を続ける藤田さん。いまの課題を尋ねると「活動を知っていただくこと」と回答くださいました。

「伝えることが大事」と強く感じている藤田さんは、活動を知らせるフライヤーを定期的に発行し、公民館などに置いてもらっています。情報を必要とする人へ届けることの大切さ。ただ『(イベントに)来てください』というだけでは来てもらえないとも話し、悩んでいる方が一歩踏み出すきっかけを探しています。

「少しずつ、子どもと関わりながら伝えて、信頼してもらって・・・」と、地道で懸命な活動を続けながら、最近はZoomやYouTubeといったITツールも駆使。新型コロナウイルス感染症にも負けず、できることをする。藤田さんのそうした姿勢が多くの方の目に留まりますように。

地域で長く暮らし、身近な人たちの相談に乗ってきた藤田さんの、コンパクトで地元に密着した活動はこれからも続きます。月に一度「かんざき櫛田の市」にテントを出しワークショップや昔遊びをされているそうで、まずは気軽に足を運んでみられてはいかがでしょうか。