佐賀県内のタイ人ネットワークづくりとタイ文化の発信に取り組む サワディー佐賀/Sawadee Saga/เครือข่ายเน็ตเวิร์ค สวัสดีซากะ(คนไทยในซากะ)(佐賀市)。イベントや各種教室の開催、災害情報の多言語対応など、国際交流と多文化共生を盛り上げています。2018年の設立時から代表を務める山路さんの元を訪ねました。

以前、青年海外協力隊として国外で活動していた山路さんは、帰国後、 認定npo法人地球市民の会(Terra People Association)のタイ事業を担当されることに。

そして2017年、佐賀で初めて開催されたタイフェアの運営を担い、ブースの出展を通して感じた思いが、サワディー佐賀の出発点になりました。

佐賀県内に離れて暮らすタイ人の皆さんが、お互いと出会うチャンスは決して多くありません。

「運営メンバーのタイ人が、ひさしぶりにタイ人と話せてイキイキしていました」と山路さんが話すように、タイフェスは文化と情報の発信とともに、タイ人同士の繋がりをもたらしたのです。この時から「タイ人の居場所がつくれたら・・・」と、タイが好きな日本人と佐賀在住のタイ人が手を取り合い、サワディー佐賀は誕生しました。

―――異国で災害に見舞われたら。

2019年8月、佐賀豪雨災害。日本人も正確な情報の入手が危ぶまれる状態のなか、外国人の皆さんはさらに深刻だったことでしょう。行政も多言語支援に取り組みましたが、在留外国人としては少数派のタイは対象外でした。佐賀県で暮らすタイ人の数は83人(2021年1月1日現在)で、1千人を超えるベトナム人や中国人に比べると決して多くありません。アジアだけで20か国以上の人が暮らす佐賀。そのすべての言語をサポートするのはどうしても難しくなってしまいます。

そこで、サワディー佐賀では独自に翻訳チームを編成し、災害情報の発信を始めました。まずは行政用語を優しい日本語に直し、それをタイ人と日本人で翻訳。さらにダブルチェックを重ね、確実性を高めたうえで公開されるそうです。

「インターネットで利用できる翻訳機能にはミスもあります」と山路さん。命に関わる情報が間違って伝わってしまわないように、細心の注意が払われています。

この頃のコロナ禍においても、サワディー佐賀の翻訳チームは感染情報を翻訳して発信していました。錯綜する情報に加えて、行政が打ち出した特別定額給付金の申請も外国人にはハードルが高かったのではないでしょうか。対面での相談対応がためらわれるなか、サワディー佐賀のメンバーは申請手続きの動画を作成。災害にも危機にもタイ人の皆さんは挫けることなく「みんなで乗り切ろうとしていました」と山路さんは教えてくれます。生まれ育った国を離れ、言葉もわからない場所で暮らす不安な気持ちや、日常会話とはレベルの違う行政用語の応酬。同じ国の仲間がいたり、自分を理解してくれる地域の人がいたりしたら、どんなに救われるかわかりません。

―――2020年度ふるさとづくり大賞(総務省)で団体表彰へ。

毎回、老若男女問わず人気のタイ料理教室や出前講座、タイ語教室などで交流事業を展開してきたサワディー佐賀。設立時に約20人だったメンバーが、今では60人にまで増えました。山路さんは「タイ人がタイ人をつかまえてくれます(笑)」とにっこり。タイ人も日本人も関わる方たちは自発的で、メンバーによる提案が増えているそうです。

数年前から、タイから佐賀に訪れる観光客が急増しました。タイ国内の映画やドラマでロケ地に選ばれたことがきっかけとなり、聖地となった祐徳稲荷神社をはじめ、県内でよくその姿を見かける存在に。このムーヴメントを支えていたのは佐賀在住タイ人の皆さんで、サワディー佐賀のボランティア通訳ガイドによるおもてなしが話題になりました。

こうした活動が評価され、サワディー佐賀は2020年度ふるさとづくり大賞の団体表彰を受賞。一躍、全国に活動を知られることになりました。

「いつか『タイ日友好協会』みたいになればいいなあ」

そうワクワクする未来をつぶやいてくれる山路さんは、サワディー佐賀を「タイ人のための団体」と言い、ご自身が代表を続けるよりも別の方、佐賀在住タイ人の方へバトンを渡すことを考えています。ただ、ファンドレイジングの面で課題を感じている、とも話してくださいました。こうした手続きに必要な事務処理は、在住していてもまだまだ外国人には難しい壁があるようです。それでも「タイ事業で得られたノウハウを活かして、他の国でもやっていきたいです」と意気込む山路さん。

既に、 公益財団法人 佐賀未来創造基金の休眠預金を活用し、タイをモデルとしたミャンマーやスリランカのグループ化支援が始まっているそうです。

きっと山路さんの眼差しの先には、タイ人だけじゃないすべての外国人と佐賀がよりよい関係でいられる、そんな胸躍る未来のイメージが描かれている気がしました。

佐賀県がタイのホストタウンを務める東京オリンピックも、もうすぐです。