2003年の設立以来、17回におよぶ本公演をこなしてきた キッズミュージカルtosu(鳥栖市)。

舞台で輝く子どもたちを長らく支え続ける事務局長の有馬さんを訪ねました。

―――「宝塚にも劣らない」と評されるキッズミュージカルとは。

30年以上のあいだ “子ども劇場” の運営に携わってこられた有馬さんは、千葉県で行われた全国大会に参加した折、地元の人たちが作り上げた舞台に魅せられました。そして「あんなにも真剣にがんばっている!地域の子どもたちを元気にしたい」と、鳥栖市制50周年記念事業に提案し、2004年に第1回公演を実現させます。当時は幼い子どもや大人も参加し、舞台に立った人数だけで総勢130名を超えたそう。

現在、小学校二年生から中学校三年生までで構成されるキャストと、保護者会による衣装・メイク・舞台進行、そしてプロの指導者たちが想いを一つにして、ハイクオリティなステージを作り上げています。2012年に行われた10周年記念公演では、九州有数の劇場である博多座(福岡市)の大舞台で上演を成功させました。

「きらきら輝く舞台を見て、自分もやりたいと言う。子どもたちは真剣です」

華やかでも厳しい世界。それでも子どもたちが続けていられるのは、憧れと努力と先輩たちの存在です。「上級生は、自然と下の子たちの面倒を見ます」と有馬さん。さらに、卒業後に進学した高校でも、リーダーシップを発揮する子どもたちが多いとも聞きました。「やりたい」から始まって、ずっと続けていくことの尊さ。

「よかった、育ってるなって。力強く生きてるなって」

成長するのは子どもたちだけではありません。はじめは「衣装づくりなんて・・・」と言っていた保護者の方々が、同じ親同士でつながることで、助け合い、乗り越えていきます。舞台づくりは、とても関わる人数の多い事業。普段は別々に暮らす人たちを束ね、公演まで長期間にわたってモチベーションを維持するのは、決して易しくないはずです。有馬さんたちは各セクションの会議や理事会を重ね、意思疎通・共有を欠かしません。しっかりとした運営体制があるからこそ、同じ目標に向かって迷わずに進んでいられるのでしょう。

キッズミュージカルTOSUを支えている大人たち。有馬さんたち運営と保護者会に加え、子どもたちの演技や歌・ダンスを指導するのはプロの講師陣、さらに音響・照明も現場に精通したスタッフさんが揃っています。そして、活動を根っこの部分から支え応援している人たち、協賛企業の数々。公演のチラシにずらりと並んだ後援団体名の多さに驚くとともに、お願いをして回った関係者・保護者の方々の苦労が浮かびました。舞台の本番は、卒業生も加勢に駆け付けてくれるそうです。

「関わり続けたい。ここがふるさとだから」

卒業生が語ったというその言葉が、どれだけの大人たちを労ったことか知れません。取材スタッフがこうして聞いているだけで心が洗われ、活力がよみがえります。キッズミュージカルTOSUで過ごす数年間のうちに、地域に支えられ成長できたという自覚と自信を獲得し、離れていても元いた場所へと帰ってきてくれる。「まるで、ひとつの大きな家族のよう」と有馬さんが話すとおり、舞台づくりはかけがえのないものを地域へもたらしました。

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、3月に予定していた本公演を延期。8月に実施を決定するまでには何度も議論したと有馬さんは言います。それでも、上演を実現できたのは「3月で卒業した中学三年生をちゃんと送ってやりたい」という、まさに家族を思う気持ち。間隔を確保した座席配置や入退場を分散させる工夫、関係者全員の徹底した健康管理など厳重な対策の結果、一人の陽性者も出しませんでした。既に高校生となった子どもたちの有終を飾ることができたのは、他ならない大人たちの覚悟があったからです。舞台上で自分を表現し続ける子どもたちに対して、大人たちもまた本気で応援している、証と絆。

「みんな、キッズミュージカルTOSUはずっと続いていくものと思っています。だから、絶対になくしたくない」

今後について有馬さんにお尋ねすると「続けていくこと」が挙げられました。子どもたちの「やりたい」を応援していくためには、協賛金や佐賀未来創造基金などの支援が欠かせません。有馬さんが2009年に特定非営利活動法人鳥栖子どもミュージカル を立ち上げたのも、活動資金を募りやすくするためでした。現在、その思いを受け継ぎ、一緒に行動してくれる人物が求められています。

キッズミュージカルTOSUの卒業生には、稀有な才能を開花させた例も。女優として活躍する木下晴香さんや江見ひかるさんは、子どもたちの誇りであり目標になっています。在籍中からセンスを発揮し、今も交流があると有馬さんは話してくださいました。取材中、ずっと笑顔だった有馬さん。聞くと子どもたちから「ワハハのおばちゃん」と呼ばれているのだとか。頼もしさや優しさ、いろんな力を与えてくれる魔法の笑顔でした。

次回公演は2021年3月。地域発のミュージカルが生み出す大きなウェーブに、今後もご注目ください。

<お知らせ>
第17回本公演『桜の下になにかいる!!』のDVDが販売中です。今すぐ子どもたちの雄姿をご覧になりたい方は、ぜひお手元にどうぞ。お求め、お問い合わせはキッズミュージカルTOSU事務局(0942-55-1000)まで。

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佐賀未来創造基金は、皆様からのご寄付(志金)をお預かりし、地域で様々な課題解決に取り組むCSOに活動費の助成・伴走支援を行うことで、地域の人たちがともに支え合う社会の実現に向けた取り組みを進めています。

明日の子どもたちに胸を張って残せる「佐賀の未来」を一緒に創っていただけませんか?

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