白石町子育て応援サークルはぐはぐは、2015年から活動を続けている親子サークルです。代表の田中さんからお話を聞きました。
○つながりはじめた親子たち
はぐはぐは、町の子育て支援センターに通っていた6名のメンバーによって結成されました。自身も結婚を機に白石へ移り住んできた田中さんは、同センターで出会う利用者の特徴として「移住者が多かった」と言います。地元ではない地域での子育ては、親に頼れず友達も少ないことから、孤立してしまうことも。母親同士のつながりが求められる局面と言えます。
「同じ立場の人と話すと救われますよね。センターでは、母親友達が子どもを見てくれて助かることが多々ありました。たとえ一分でも、お茶を飲んだりトイレに行ったりできますので。子育てはたくさんの方におんぶにだっこできるといいと思います。子どもたちを地域でいっしょに育む。ハグする。それが、はぐはぐの由来です」
活動の一つは、自分たちが興味や関心があるテーマに沿って話せる場を開くこと。子どもたちの成長とともに、不安に感じることや悩み事は変わっていくため、様々なテーマで座談会を行っています。育児書やネットの知恵袋ではなく、同じような悩みを抱えている人と出会えることは心強い。食物アレルギーやスキンケア、子どもの就園・就学についてなど、忌憚のない意見が交わされています。
もう一つは『知りたい・やってみたい』を講座にして開催すること。農作物の収穫体験をしたり、乳幼児を連れても楽しめるコンサートを実施したり。講師に僧侶を迎えた講座『生と性と死』は、思春期を迎える子どもを持つ親たちから反響を呼びました。
○はぐはぐの防災ハンドブック 大雨・台風編
これまで、相次ぐ災害に備えるため、防災カフェと呼ばれる座談会や防災体験を開催してきたはぐはぐは、2021年に一冊のハンドブックを制作しました。このハンドブックには、震災や豪雨災害を経験した方の備蓄品紹介、避難所で過ごした方の体験談など、地域の方たちの知識と経験が集積され、わかりやすい言葉で綴られています。
町役場や図書館、地元消防団の協力を得ながら、半年以上をかけて作られた手づくりハンドブック。
「みんなわかっているかもしれないけど、わからない人のためにハンドブックがあるといいよねって話になりました。自分たちの生活や暮らしに近いものを見つけるためにも、備えのパターンは複数あったほうがいいですよね。
実は、防災と子育ては共通している部分があって、ちゃんとしなきゃって構えてしまいがちなんですけど、もっと気楽にしていい。
心配して、不安で、しっかりかっちり準備していても、活用できなければ意味がない。子どもが好きな食べ物、安心できる物を入れておく。
災害時の非日常を少しでも安心して過ごせるように準備する。とりあえず、それくらいでOKなんです」
2019年の豪雨災害で甚大な被害を受けた白石町。
実体験をベースに、地域の防災を住民目線でまとめたハンドブックは、手に取った大勢の人たちにとって道標となったことでしょう。
情報が身近に感じられ、有事を自分事にさせてくれるのは、他ならぬ地域の人々の声だから。これは記録でもアーカイブでもない、生きた声がぎゅっと詰まった、未来を守る一冊です。
○課題とこれから
活動を続けていくうち、はぐはぐメンバーの子どもたちは成長し、親たちの悩みも変わっていきます。寝かせ方や離乳食の食べさせ方が、習い事や学校での生活、子どもたちの人間関係のトラブルなどにアップデート。
「参加してくれる方の多くは、私たちスタッフの子どもたちと同世代のお子さんがいます。はぐはぐでは、自分たちが悩んでいること、知りたいことをテーマにするので、必然とみんなのライフステージに沿った内容になってきます。
なので、下の世代の参加者さんに出会える機会が少なく、活動を知ってもらえているのか、これからどうしていけばいいか、という思いはあります。
3歳以下のお子さんが第一子、という方たちはコロナ禍での子育てですよね。行動が制限され、人と人との出会いや繋がる機会が少なくなっているので、もし自分に何かあったらどうしよう、と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
子どもたちの年齢は違うけれど、同じ地域で子育てしている縁を大切にして、自分たちにできることを考え、続けていきたいです」
今後は、『子どもにダメと言わない日』をつくり、水風船や干潟遊びを存分にさせてやりたい、と語る田中さん。一方、スプラトゥーン(インクを撃ち合うゲーム)のリアル版をイベントで実施してみたいとも話し、親子で楽しめる発想力を披露してくれました。
お互いの子どもを育み、講座やイベントで多世代を巻き込むはぐはぐの活動は、きっと未来の地域を育んでいるのではないでしょうか。
(写真)
・サンクスメッセージ
・子どもたち(3枚)
・「生と性と死を考える」講演会
・キッズのためのアンガーマネジメント
・防災講演会
・防災ハンドブック
・今後に向けたメッセージ