児童支援事業所ガラパゴス(武雄市)は、2019年より県の認可を受け、放課後等デイサービス(放デイ)をスタート。その直後、九州北部豪雨に被災しながらも、決して挫けることなく奮闘されている代表の小柳さんと木須さんを尋ねました。

20名前後の障害を持つ子どもたちが通うガラパゴス(一日の定員は10名)。その子どもたちの居場所が、九州北部豪雨によって危機的状況となりました。建物は腰より高く浸水し、揃えて間もない備品を処分することに。水が引いてもいやな臭いの残る中、変化に敏感な子どもたちに注意を払って、消臭や設備の刷新に努めたそうです。被災から再び受け入れを始めるまでの約3か月間、困っている子どもたちを思いながら復旧に力を注ぎました。その間は別の事業所へ受け入れを勧めながらも「場所が変わると、いつもどおりできない子もいます」と小柳さん。金融機関から借入を増やし、早期の再開を目指しました。

―――障害を持つ子どもと災害。

それまで、保護者たちを含め誰も有事のイメージを持てませんでした。「もしもの避難よりも今。毎日が大変なんです。環境の変化が苦手な子どもたちにとって、避難先で過ごすリスクは小さくありません」と木須さんは言います。パーソナルスペースの確保が重要な意味を持つ子どもたち。避難先で不安定になってしまうことは想像に容易く、対応しなければいけない保護者からすると、避難という選択肢は考えたくないことかもしれません。けれども、現実に災害は起き、避難しなくてはいけなくなったのです。

「地域と連携して、防災意識を高めるように声かけをしていきたい」というお二人ですが、声かけに反応してもらうためには関係性の構築が欠かせないとも聞きました。変化するリスクを抱える保護者たちは、わずかな情報では行動に移しません。ガラパゴスのように普段から密接に関わり続けている人たちでなければ、声は届かないでしょう。先日、おもやいボランティアセンター
(武雄市)の企画した防災キャンプに、子どもたちと参加した小柳さん。避難を想定した宿泊体験は予想通り、大変だったと言います。「薬をいつ飲んだらいいか、ここからさらに避難することもあるかもしれない、といろいろ考えました。平時から準備していかないと」。

必ず苦労すると分かっていても、未来に起こることを想定し自ら体験する。小柳さんが防災キャンプで得た気づきは、いずれ大勢の人の道標になるはずです。

2012年、国の新たな障害児支援政策として創設された放デイ。児童福祉法の一部が改正され整えられた設置基準のもと、多くの事業者が参入しました。しかし、制度は制度。形づくられた枠には、必ず枠外が存在するものです。実際の運用が民間の資本主義に委ねられたのち、どういった課題が見えてくるのでしょうか。

例えば、受け入れの可否。一人の子どもに対してどこまで対応が必要かによって人件費が決まり、それは経営に直結します。したがって、入所を希望する子どもの特性によっては「理由を告げられずに断られるケースもあります」と小柳さん。別のサービス事業所でトラブルを起こしたり、心が不安定になりがちだったり、そういった子どもたちの受け入れは、ビジネスの観点から弾かれてしまうこともあるようです。

しかし、小柳さんは断りません。

「子どもに寄り添い、理解する支援者でありたい」

学校、家、医療機関、福祉事業所。保護者の声を受けて、小柳さんは各所を走り回っています。

「どこに聞いたらよいかわからなくて・・・」といった相談やトラブルの解決、子どものことを「自分の代わりに〇〇に説明してほしい」とお願いされることも。保護者であっても、日々変化する子どものすべてを理解し、言語化できるわけではありません。時には世間のバイアス、杓子定規の壁に悩むこともあるでしょう。それでも「お母さんも少しずつ成長しています」と小柳さんは教えてくれました。

当然ながら、こうしたガラパゴス以外での活動は、放デイの制度には含まれません。しかし、子どもたちの過ごす放課後の数時間、その背景にあるもの・・・すなわち小柳さんたちが見ている景色と分け隔てのない活動こそが、私たちの直視すべきものではないでしょうか。

「わかんない人はわかんないでいい、では済ませられない」

引かれた線の向こう側で、助けを求めている人がいる。多くの人がそこに行くことをためらうなか、迷わず進む人がいる。

ガラパゴスの出演したドキュメント番組『目撃!にっぽん』(NHK・2020年10月25日放送)の放送終了後、全国から電話やメールが殺到し、直接ガラパゴスへ来所される方もいると聞きました。そんな方たちにも丁寧に対応する小柳さんと、その疲労を気遣う木須さん。とても素敵なパートナーです。今後も、お二人を必要とする方たちは増えていくでしょう。そして、誰かに寄り添い理解することが、いつか制度そのものを動かす大きな力になる。取材スタッフはそう強く感じました。

+ + + お 願 い + + +
ガラパゴスはクラウドファンディングに挑戦中です。調達した資金は九州北部豪雨で被災した設備の修理や送迎車購入費用に充てられます。皆様のご支援をよろしくお願いいたします。気持ちのこもった返礼品にもご注目ください。※このプロジェクトは1月1日までです!ご支援はお早めに!
https://www.makuake.com/project/rightp/

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佐賀未来創造基金は、皆様からのご寄付(志金)をお預かりし、地域で様々な課題解決に取り組むCSOに活動費の助成・伴走支援を行うことで、地域の人たちがともに支え合う社会の実現に向けた取り組みを進めています。

明日の子どもたちに胸を張って残せる「佐賀の未来」を一緒に創っていただけませんか?

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