被災地支援チーム「OKBASE(オカベース)」は、西九州大学神埼キャンパスの学生や卒業生、教員で構成されています。取材にあたり、発起人である代表・岡部先生のゼミにお邪魔させていただきました。
対応してくださったOKBASE副代表の竹井さんは、社会福祉学科の3年生。「先生は被災された方との距離の取り方が本当に上手。すごく大事なことです」その言葉とその表情から、被災地におけるコミュニケーションの難しさが表れていました。竹井さんたちが被災地で実施している足湯やハンドケア、蜜蝋クリーム作りといった活動は、被災者一人一人に寄り添うことを第一にしています。
「はじめは被災者さんの不安を随所に感じました。遠い目をしていたり、うつむき加減だったり。お話の内容も暗くなりがちで」
泥にまみれた家屋、切断されたインフラ。喪失感のなか、コミュニティからも隔絶されてしまった被災者の精神的な負荷は相当なものです。話したいこと、お願いしたいことがあっても、突然やってくるボランティアにいきなり心を開くなんてできません。「どんなに楽しい話題を振っても、皆さん災害のことは忘れられないんです」と話す竹井さんは、一体どれだけたくさんの思いを受け止めてきたことでしょう。
ある高齢のご婦人は、足湯に入るのに足を見せたくないと言います。年齢がいくつでも、旦那さんがいようがいまいが、やまとなでしこたるもの若い男性に肌を見せるわけにはいかないのです。それでも、会話を重ねることで打ち解けていくのですから、竹井さんたちは磨かれたスキルの持ち主。本人は「若いというだけで高齢者の方に喜ばれます(笑)」と照れますが、人と向き合う意志と行動力、思いやりがあればこそ、です。
「『次、いつ来ると?』って聞いてくださるのがめちゃくちゃ嬉しいです」
竹井さんは福岡県朝倉市の出身で、平成29年の九州北部豪雨では親戚の家が被災。叔母さんがずっと大切にしていた嫁入り道具を処分することになって、失ったものの大きさを考えさせられました。また、就労継続支援B型に関わる仕事をしていた父親の職場を見たとき「かっこいい!」と思ったそうです。今後も資格を取り、社会福祉の分野で貢献し続けたいと話してくれました。
実体験から芽生えた志を礎に、着実に経験を重ねている竹井さん。そんなOKBASEの牽引役に今の課題を尋ねました。
「チームに入っているけど、一歩を踏み出せず現地へ行けないメンバーの後押しができたら・・・」
ボランティアへ参加することは、とてもデリケートな側面を持っています。取材スタッフも九州北部豪雨で泥出し作業に参加したとき、緊張して臨んだことが忘れられません。誰でも参加できるけれど、いい加減ではいけないし、逆に迷惑をかけてしまったらいやだな…と、臆してしまう。先輩ボランティアのようにスムーズに動けなかったり、現地でのコミュニケーションの取り方に戸惑ったり。竹井さんはどのようにして後輩にアプローチするのでしょうか?
「率直な気持ちで声かけをします。今こんなことしてるんよー、みたいな自然な会話です。あとはシンプルに『お願い!』って」
物事は正面からいくタイプだという竹井さん。この熱量が感じられつつ裏表のないスタンスは、現地での支援活動にも欠かせない要素です。「やらされている感じとか、やってあげている感じとか、必ず住人さんに伝わりますから」と教えてくれました。OKBASEの『一人一人に寄り添う』姿勢は、メンバーに対しても実践され、それが被災地の復興を引き寄せている秘密なのかもしれません。
毎週、太良町で足湯とハンドケアを行っているOKBASE。ようやく畳を張り替えた家もあると聞きました。被災地への継続的な支援が求められるなか、#おもやいボランティアセンター をはじめ各団体と連携して、竹井さんたちは積極的な活動を続けています。岡部先生と仲良くふざけあう姿が、チームの信頼関係を示しているようでした。