貧困家庭における子どもたちの学習支援に、2019年から取り組んでいる スタディサポートgreenbook(佐賀市)。

代表を務める田中さんを訪ねて、活動場所の一つである 佐賀市市民活動プラザへお邪魔しました。

ーーー子どもたちに学習する場を提供。

greenbookでは、毎週水曜日の夕方に佐賀市で、土曜日の夕方には鳥栖市で、それぞれ学習支援を実施しています。

利用は無料、文房具やお菓子の用意も( フードバンクさがより提供)。

田中さんをはじめ、大学生や現役あるいは退職した先生たちが、ボランティアで勉強を教えています。

対象は主に、貧困家庭。

「事情で不登校になってしまった子どももいる」と伺いました。

学習意欲があるにもかかわらず、その機会が得られない子どもたち。

greenbookに通うのは「中学生と高校生が半分ずつくらい」で、マンツーマンに近い指導を味方に、志望校合格へ向かって励んでいます。

ーーーかつて受けた学習支援の恩返し。

「私も、学生時代は経済的に厳しい家庭で育ちました」と言う田中さん。

ご自身も勉強に苦労されたそうです。

学校の先生の教え方が下手で「分からないところを、教えてもらう場所がなかった」と、当時の振り返ってくれました。

それでも努力して大学へ進み、結婚のため一時は中退したものの、再起し復学します。

子育てをしながらの通学。

この時、田中さんを支えたのは大学教授と、その奥様だったと言います。

自宅にホームステイをさせてもらい、授業のある間は奥様が子守りをして、田中さんを学習の場へと送り出してくれたのです。

この“学ぶことが好きな自分を助けてもらった体験”への恩返し。

それが、greenbookの活動の原点と言えるのではないでしょうか。

ーーー「私、日本一、教えるのが上手なんです(笑)」

田中さんは、家庭教師として36年のキャリアを持つ、人に勉強を教えるプロフェッショナル。

子どもたちにとって、わかりやすく教えてくれる先生の存在がいかに重要かを知っています。だからこそ、greenbookで教えるボランティアの先生にも、教え方が上手でないときは注意を厭いません。

「教え方が下手なのと、偉そうなのはNGです。主役は生徒」と話す田中さんの言葉には、子どもたちが意欲を損なわず学習し続けられることへの配慮が見れます。生徒あっての先生。

こうした理念を伝えることで、教える側も成長していると言います。

寄り添いながらも、こと点数については子どもたちにもシビア。そして、学校の先生の教え方に違和感があったときは、どうしてそうなるのか聞いて先生と戦いなさい、と田中さんは教えています。

やらなくてもいい解き方を強いられたり、もっと簡単な方法があるのに教えられなかったり・・・。

そうした気付きや改善への工夫が、自分で考える力を強くするのかもしれません。

greenbookの子どもたちは「学習塾よりも成績が伸び、その人間性も誉められることが多いんです」と田中さん。

ーーー夢を叶えるプロジェクト。

greenbookの最初の生徒は、現在『ハルレンジャー』と呼ばれている男の子です。発達障害を抱え「スーツアクター」になりたい彼の夢を叶えるため、greenbookの仲間がサポートチーム『Team ハル』を結成。

一般社団法人 地域活性化いじめ撲滅実行委員会の協力も得て、ハルレンジャーショーの開催を実現しました。

ハルレンジャーの活躍はメディアで取り上げられ、同じ境遇にいる大勢の子どもたちと親たちに、勇気と力を与えたに違いありません。

この秋も、子どもたちの“やりたい”を叶えるイベントが開催されます。

中学生が発案した『つぼみまるしぇ』は、子どもの、子どもによる、子どものためのマルシェイベント。

2021年11月14日(日)の本番に向けて、準備が進められています。

greenbookのFacebookページ

ーーー課題は・・・。

日々のFacebook投稿で見られるように、greenbookが実施している学習支援は子どもたちに大人気。

その分、教える先生が必要になっています。

学生で教師を目指している方などはとくに、田中さんから教える技術を習得するチャンスではないでしょうか。

何より、生徒に意欲がありモチベーションが高い空間は、先生のやりがいがありそうです。

ご興味をお持ちの方は田中さんまで。

ーーーいちばん、伝えたいことはなんですか。

最後の問いかけには「小さい時、いっぱい遊んでほしいです」と、意外とも言える答えが返ってきました。

「土を触ったり、水遊びをしたりといった遊びの中には、数学や理科の要素が詰まっています。

あと、折り紙は折った時に角度がわかるし、ブロックは立体が描けるようになるんです」なるほど、一つ一つの動作で意識しなくても、感覚というものが培われている、ということでしょうか。

教科書の中にある勉強だけじゃない、もっと大きなスパンで捉えた、学習のコツというかヒントのようなものが、田中さんの言葉に散りばめられています。

greenbookで学習支援を受ける子どもたちは、受験期間のその遥か先、およそ人生に影響するような『気付き』が得られるような気がしました。

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佐賀未来創造基金では「どんな境遇の子どもたちも見捨てない!」をスローガンに掲げ、 こどもの居場所に取り組むCSOを応援するためのご寄付を募っています。

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