【採択助成事業】
荏原環境プラント「e-さが基金」第1回、第2回、第4回、第5回
浅海干潟環境学labは、佐賀県有明海の東よか干潟の環境活動を広く啓発するため、地元小中学校の環境教育を行っています。
浅海干潟域の物質循環や生態系をテーマに研究をしている佐賀大学の学生が中心となって活動をしています。
今回は、代表であり、学生たちと普段より研究を行っている佐賀大学農学部准教授の郡山益実さん(以下、郡山さん)に活動について具体的なお話を伺いました。
◇干潟をきっかけに環境を身近に捉えてほしい
佐賀市南部の有明海に位置し、国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されている東よか干潟。
日本一のシギ・チドリ類の渡来数を誇り、ムツゴロウやシオマネキ、ワラスボなどユニークな干潟の生き物も数多く生息しています。
そんな東よか干潟の価値や魅力を発信し、観光・学習・交流などさまざまな活動の拠点となる東よか干潟ビジターセンター「ひがさす」が2020年に開館されました。
開館前後当初から、どうすれば多くの人に干潟のことを知ってもらうことができるのか施設関係者と協議をしていたといいます。
佐賀の地元に住んでいるからこそ敢えて堤防を越えて干潟を観察する人は少ない状況でした。
「建てただけではなく、ソフトの面で本当に興味を持ってもらえるようにする方法を考えていました」と振り返りながら話す郡山さん。
◇干潟を知ったその先で理解を深めてもらうために
より身近に干潟やその環境を知ってもらえるようなイベントを「ひがさす」と連携して取り組むようになりました。
例えば、干潟の泥を取ってきて漂着ごみを探し何が多く流れてきていたのかを考察したりするそう。
ゲーム感覚で参加する子どもも多く、自分たちの暮らしの身近に干潟や取り巻く環境について考えるきっかけになるといいます。
「ゴミを拾うだけではなく、その先にどういった問題があるのかを考察してみることが大事です。
そして、普段の暮らしから何ができるのかまで考えられると良いと思っています。」と郡山さんは想いを伝えてくださいました。
また、最近はより学術的なテーマから干潟について理解を深めてもらうための取り組みもしたといいます。
50年前に佐賀西高等学校の生物部に在籍する生徒が、干潟についてノートに記録をしたものが残っていたことに着目をしました。
当時、干潟にどんな生物が生息していたのかを記録した文献として活用できると考え、データ版に変換して冊子として出版することに。
生き物が干潟にどのような役割を果たしているのかを掴むきっかけになるかもしれないといいます。
◇一人でも干潟に興味を持ってくれるきっかけづくり
熱心に様々な着眼を持って干潟を知り、理解してもらおうと思考を重ねている郡山さん。これから描く理想の状態とはどういったものなのでしょうか。
「取り組んでいる活動は、一人でも干潟について興味を持ってもらうため。
将来は佐賀大学の研究室に来てくれるようになれば、と学生たちと話をしてるんですよ。
修学旅行で子どもたちに来てもらえると、もっと知ってもらうきっかけになるかもしれないと思っています。」と話します。
そのために、プログラムをもっと充実したものにしていきたいと考えているようですが、大学生は年々卒業をしてしまうため人材育成をその都度しなくてはいけないことに課題を感じているそう。
10年や、その後も継続して進めていけるような体制づくりが、これから考えなくてはいけないことだといいます。
「野鳥を見るために、北海道の地名がナンバープレートに書かれた車が止まっていることもあるんですよ。
野鳥がたくさん来てくれるような干潟にするには、餌となる生物がいないといけないんです。
やはり、干潟の研究を進めながら活かしていきたいです。」と活動に込めた想いと共にメッセージを伝えてくれました。
佐賀だからこそ、体感できること、興味を持てることの1つが干潟とも言えるでしょう。そんなきっかけをつくる取り組みに、今後も注目したいです。