【採択助成事業】
2021年度-事業指定-「星と湖に囲まれた山のシェアオフィスを創りたい! 新しい働き場・新しい山の過ごし方を発信」
2022年3月まで地域おこし協力隊として活動をし、卒業後は佐賀市富士町の”山間部”に位置するコワーキング&レンタルスペース「音無てらす」の運営をスタートさせました。現在では、合同会社Light gearとしてキャンプ場の運営やその他映像制作の事業もされています。
佐賀県に移住をしてから、わずか2年半の間に多くのチャレンジを重ねてきた山本卓さん(以下、山本さん)。
その取り組みと背景にある思いについて、に聞きました。
◇佐賀県に移り住んでみたからこそ感じた課題
山本さんは佐賀県に*地域おこし協力隊として2019年に佐賀市の富士町へ移住してきました。
当時は佐賀の山で働く人たちの暮らしや働き方を発信するローカルWEBメディアで地域の編集者として、密着取材をする仕事をしていました。その時に住みながらある課題を感じたといいます。
「実際に住んで地元の方の声を聞いていると、この先に草刈りできる人がいなくなるほど人が少ないことを実感しました。どうにかして食い止める方法は無いかと思うようになったんです。」と振り返る山本さん。
その後、コロナにより社会全体がテレワークを推進するようになったことで、仕事を辞めなくても山間部を仕事場として活用できるのではないかと思うようになりました。
そのアイディアに至ったのには、ある移住者の方と話をしていることがきっかけだったそう。
「移住をすることは重くないか?と聞かれたんです。
移住は仕事を辞めて来ないといけないと思っていたようで。だったら辞めず、まずは気軽に佐賀に来てもらえる方法を考えようかなと。」
佐賀市の中心部にはテレワークをする場が既にあり、佐賀といえば山の魅力だと思い、山間部に敢えて着目をしました。
◇ スタートするまでに想定を超える壁が待ち受けていた
コワーキング&レンタルスペースをスタートさせるために、準備を進めることになった山本さん。しかし、その期間は想像以上の壁があったといいます。
「最初は、古民家を活用しようと思っていました。でも、なかなか物件が見つからず、見つかっても空き家の要員の1つである仏壇管理の問題などが思った以上にあり、結果的に新築を建てることになりました。」と思い出しながら話します。
そんな時、佐賀県に移住を決めたきっかけでもあったという1級建築士の藤田さんが山本さんの思いに協力して土地を買い、設計をしてくれることになりました。
土地を活用して山間部の交流人口を増やし、移住を促進するコンセプトによって、佐賀県庁も協力の元、クラウドファンディングで資金を集めるプロジェクトにまで発展します。しかし、そこで更に壁が待ち受けていたといいます。
「実は最初、全然集まらず、3ヶ月で300万円を目標にしていたところが、約170万円にとどまってしまいましたでした。
もう3ヶ月延長することを決め、個別に必死にご協力のお願いをすることによって、どうにか達成の目処が立った矢先に、コロナの影響によって材木の値段が上がり当初の見積もりでは建築資金が足りない事が分かりました。」1つを突破しても、また壁に衝突するような感覚が続いていたそう。
そこで銀行融資を受けるための手続きや、そのための事業計画の見直しなどをすることに。どれも初めてのことでしたが、がむしゃらに挑戦していきました。
◇ 音が無いから、人は喋り出す。”やりたい”を生み、生かし合う場所に。
以前は東京で芸能関係の仕事をしていた山本さん。職業柄もあってでしょうか。やっぱり、話をすることやビジョンを語ることが得意とか。
しかし周囲に、なぜ賑やかな山本さんが静かな富士町でこの事業をやるのか、と聞かれたといいます。
「”確かに”と思って自分でも改めてコンセプトを考えていました。もともと”音無”は地元の人が呼んでいた愛称だったんです。その名を素敵だから残していきたいと感じていて、音無のような”静かな空間”と賑やかな僕のギャップに悩んだ結果がてらすになりました。
音が無いからこそ人は話したくなるし、その音が更に集まって大きな音になっていくのでは、とひらめきました。」現在では、山本さんを訪ねて全国各地から旅や移住を目的に様々な人が交わる場所になっているといいます。
開始からこれまでの10ヶ月で来た人数は約800人。そんな場所がこれから目指していることは、なんでしょうか。
「この場所を運営してみて、佐賀県には多くの”やってみたい”を持つ素敵な人が多いと気がつきました。ここを拠点にして、集った人がスキルをシェアし合えるようになれたら良いなと思います。」と未来を描く山本さん。そんな仕組みを作れるように現在企画を練っているところだそう。
自分ができることを、言語化して伝え合えば持続可能な社会になってゆく。佐賀県に住む人同士がお互いの関係性を深めるキッカケづくりをこれからも広げていきます。
まだまだ、山本さんの挑戦はこれからも続きます。また壁が立ちはだかっていたとしても、きっと突破していけること願って応援をしていきたいですね。