【採択助成事業】
「休眠草の根」-2019年度採択事業
「虹の松原の再生保全活動の拡充を目指すための基盤整備事業」-事業指定-2019年度
「松竹梅な助成プログラム」マーケティング基礎調査-事業指定-2013年度
「唐津環境防災推進機構KANNE」(以下、KANNE)は唐津のシンボルともなっている虹の松原を白砂青松の姿で次世代へ引き継ぐための保全活動をしています。また同時に、自然との交わりを通して地域コミュニティの形成を目指した取り組みも行っている団体です。
今回は、理事長の藤田和歌子さん(以下、藤田さん)に現在実践されていることや、今後の展望などを聞きました。
◇ 人の手によってつくられた松原だから、人によって保全する必要がある
唐津には海もあれば山もある、自然の恵みに溢れた地域と言えるでしょう。
また、自然があれば一緒になって考える必要性があるのが防災について。そのため、自然や防災に関連する様々な取り組みや団体がある地域でもあるといいます。
KANNEはそのような様々な団体の核となりネットワークをくみながら、人と自然の共生を目指して2006年に形成されました。
特に唐津のシンボルでもある虹の松原では、かつて人々が燃料にするために松葉をかき集めること(通称;松葉かき)が日常生活の一部として行われていました。しかし、近代化に伴い私たちの暮らしが変化したことによって次第に松葉かきが行われなくなり、放置され、荒廃が進んでいるそう。
「自然だから人が手をつけてはいけない、と思われる人も多いと思いますが虹の松原は人の手によって植林された林です。寧ろ手をかけなくてはいけません。」と危機感を持って藤田さんは伝えます。
以前は、虹の松原は国有林であるため勝手に立ち入ることができませんでしたが、2007年に国が保全のための基本計画を策定したことで、地域・行政が協働した保全活動がスタートしました。
◇ 長く続けてきた保全活動を通して人が元気になってほしい
こうして始まった保全活動は現在、主に2つの方法で進められているといいます。
1つは虹の松原を区画で分けて、それぞれが担当となって管理を行うアダプト制度というもの。唐津市内の個人や学校、企業を中心とした約8,000人が登録をしています。
もう1つはだれでも気軽に参加できるボランティアイベントのKPP(Keep Pine Project~虹の松原クリーン大作戦)。
予約も必要なく当日参加可能で、松葉かきや草抜きなどを行います。多い時には参加者が600人を超えることもあり、小さな子どもから年配の方まで参加していて地域の交流の場にもなっているそう。
長年続けていることで認知度も高まってきており、「リタイア後、社会との繋がりを確認出来る時間になっています」「学校には行きづらいけど、ここには来やすいです」などと、嬉しい声も届いているようです。「保全活動は環境問題のための活動と思われるでしょう。もちろんそれは大事な活動の目的なのですが、その活動を通して関わる人が元気になってほしいです。」と藤田さんはいいます。
◇ 自然を通して地域に住む人々を元気にしていきたい
15年以上にわたって実践を重ねてきたものの、まだ十分ではないと、2つの保全活動に合わせて課題もお話いただきました。
アダプト制度は多くの人が登録していますが、実は虹の松原の総面積の25%にしか過ぎないそうです。
より興味や関心を持ってもらったり、必要性を知ってもらうきっかけをいかにつくっていくかが課題だといいます。
「学校向けに環境学習を届けることがありますが、唐津で育つ子どもたちが自分たちの地域についてより理解を深めてもらいたいです。」と話す藤田さん。
また、活動を通して希薄になりつつあるコミュニティを少しでも活発にできるような場づくりの工夫を考えているとか。
「保全活動に参加してくれた後の親子が清々しい顔で帰っていくのを感じると、やって良かったなと思えます。また、実際に来られない人でも虹の松原をキーワードに、募金箱や葉書などで寄付をしてみるなど色々な人が関わることができる接点を増やしていきたいです。」と今後への思いも伝えていただきました。
KANNEのコーポレートカラーは、オレンジ色で、人のあたたかい心を表しているそう。これからも「虹の松原」という共通言語を通して人の輪が広がっていくことを願います。