ふるさと・夢つむぎネットワーク(小城市)は、牛尾梅林で知られる三里地区で耕作放棄地を整備し、自然を生かした地域づくりを行っています。団体を取りまとめる西岡さんの元を訪ねました。

およそ十年前、佐賀大学の公開ゼミに参加した10名ほどが集まり、「三里の耕作放棄地をどうにかしたい」と立ち上がって、2013年に任意団体『ふるさと・夢つなぎネットワーク』は生まれました。当初から活動するのは西岡さんを含めてお二人だそうですが、途中から若い世代の方も参加するようになり、現在は25名の方が里山の保全に尽くされています。

初めは5反(約5,000㎡)だったその面積は、活動を続けるうちに広がって2町2反(約22,000㎡)にも及ぶと伺いました。「実際に山へ入るのは5、6人」と話す西岡さんですが、人数に対してあまりに広範囲です。

「牛尾の三分の二くらいが耕作放棄地という感覚」という西岡さんによれば、住民の高齢化や農家の後継者不在などが影響して、耕作放棄地は増加傾向にあるそう。担い手を失った広大な土地。その管理をするうえで一番の苦労は下草刈りだと西岡さんは言います。そして、ウメやミカンなど樹木を育てては商品化・販売。そうすることで得られたお金は重機の燃料代や人件費に充てています。ここで、西岡さんたちと一緒に山で活動している地元の高校生がつくったという話題の商品を紹介してくださいました。

――――”牛尾山の贈り物『梅と梨のステーキソース』”

佐賀県立牛津高校(小城市)の家庭クラブが考案し、全国大会の最高賞「文部科学大臣賞」に輝いた逸品。材料には牛尾山のウメと梨が使用されています。数年前から、ふるさと・夢つむぎネットワークとともに収穫や草刈りに汗を流しているという生徒たち。草木染めにもチャレンジするなど、地域課題を体験しながら改善に向けた取り組みを進めています。また、西九州大学の学生たちが活動に加わることあり、西岡さんたちと若い人たちとの連携は、”いま”の地域づくりのみならず、もっと先の、将来の地域をつくっていくはずです。

「なんでもやらなくてもいいよ、できることをやってくれたら」

現在、市民活動センターに勤めている西岡さん。以前アルバイトに来ていた学生の一人が、その後社会人になってからも山の草刈りを手伝ってくれていると教えてくれました。きっと、西岡さんから学び感じたことが、それからの人生で大きな意味を持つようになったのでしょう。

地域課題への取り組みも地域づくりも、押し付けられては自分事にならず、若い人たちが動かないままだと持続しません。西岡さんたちが実践する姿は、地域のことを思える人を育てています。

ふるさと・夢つむぎネットワークの活動拠点に『三里モンテ』があります。西岡さんらが開墾した土地にピザ窯やツリーハウスを設置し、さらにオリーブやミカンの畑が広がる体験スポットです。季節ごとに収穫イベントやワークショップが実施され、交流とともに活動内容の発信が図られています。

こうした活動に込められた、耕作放棄地の解消を目指す西岡さんの強い思いとは。

「地域で活動する自分たちを見て、奮起してもらえたい」

長く活動を続ける西岡さんですが、三里地区で耕作放棄地を抱える地域の方たちと、もっと連携してやっていきたいと言います。活動を山での作業に留めずにイベントの企画にまで広げるのは「まず自分たちを見てもらって、気づいてほしい」と。

西岡さんは佐賀県出身ですが、それは小城でも三里地区でもなく、代々この地で暮らしてきた方ではありません。それでも縁があって小城のまちに関わるうちに、今後は小城のためになることをしたいと思うようになりました。高齢化も担い手不足もわかる、それでももっと自分たちの問題を自分たちでどうにかしていくという気概が欲しい・・・。これは三里地区だけに限らず、全国どこでも発生している事象ではないでしょうか。行動できる人や問題意識のある人だけが動いていては、いつか疲弊して心が折れてしまいます。

だから決して人頼みにならず、できることを、一緒に。

嬉しい変化もありました。数年前、西岡さんたちの姿に心を動かされた地域住民の方が、活動を手伝うようになったそう。その方は「この場所くらいは住民がやらないと。自分たちの土地を守らないといけない」と言って、今も保全活動を続けているということです。西岡さんたちの思いが通じた象徴的な出来事でした。

今後の活動についてお尋ねすると、事業の継続性を挙げられ「今やってくれている人たちをサポートできる人材がいてくれたら。

30代、40代の方に活動を引き継いでいきたい」と西岡さん。

今年もまたウメの花咲く季節が近づき、牛尾梅林は色鮮やかに染まるでしょう。そこには自然を、資源を守ろうと心を決めた人たちがいる。

そう思い出したら、一度参加してみてください。会員・ボランティアのお問い合わせは西岡さんまで。

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