食べられるのに捨てられてしまう食品ロス問題。年間600万トン以上(農林水産省のホームページより)におよぶ廃棄を未然に防ぎ、食料を必要とする施設や団体へ届ける活動が”フードバンク”です。
2019年より佐賀で活動されているNPO法人 フードバンクさが(佐賀市)を訪問し、理事長の干潟さん、事務局長の鍋田さん、事務局の石原さんにお話を伺いました。
日々の流通過程で多くの食品が廃棄されている現代社会。大きな理由は食品小売業の商習慣によるもので、製造業、卸売業、販売業と食品が渡されていくなか、それぞれが決められたルールを守るために発生します。次に、ロットにならないバラバラの商品、そして返品や輸送中のトラブルなども。この食品業界ならではの製造と廃棄のサイクルは、消費者の安全を守るうえでは必要なことかもしれません。ただ、生産者にとっても加工業者にとっても大切な商品です。そんな商品を必要としている人が、世の中には大勢いる・・・。
全国ではいくつかの地域で立ち上げられていたものの、それまで佐賀にはなかったフードバンク。干潟さんは以前から食品ロスの問題を意識されていました。
「たい肥化やリサイクルは仕組みがありました。でも、せっかくの食品を、そのまま活用できたら」と、現在の活動をスタートします。ご自身もスーパーに勤め工場や生産者と繋がりを持っていた干潟さん。
「思いのあるものをロスしてしまうのは・・・」と話されるように、この活動にはモノとしての食品だけではなく、その製造に関わる人たちの気持ちを大切にしたい、そんな感情が干潟さんから伺えました。
アメリカで生まれたフードバンクの取り組みは、一種の習慣・文化とも言えます。
ゆえに、フードバンクが存在しなかった地域において、人々に根付いていないものを認識してもらい、理解へと繋げていくのは並々ならぬことだったでしょう。
まだ企業からの寄贈がなかった頃、食品を支援団体へ届けるというフローを実践するために、鍋田さんと交流のあった『フードバンク山梨』から食品の提供を受けて稼働したそうです。
また、干潟さんは「仕組みを学ぶため『フードバンクくるめ』にボランティアで参加しました」と手探りだったという当時のことを教えてくださいました。その後、懸命な活動を続けられ、2020年12月にNPO法人化。「企業と取引をするうえで法人格を尋ねられることがあって予定を早めました」と石原さん。現在は多くの企業・団体・個人から寄贈を受け入れ、50を超す団体を支援しています。
―――支援ではなく、ギフト。
新型コロナウイルス感染症拡大に見舞われた2020年。
以前から学生さんの苦境を気にかけていたという有志の方(県職員さん)との共同企画で、コロナ禍の影響を受けた佐賀県内の大学生を対象に「サンタプロジェクト」が実施されました。コロナでアルバイトができずに苦しむ学生や、帰国できない外国人留学生に、お米やカップラーメン、お菓子などを二度に分けて計約200食を提供。
運営を手伝ってくれる学生もいて、温かい交流の場にもなっていたようです。
石原さんが「支援じゃなくてギフトです」と教えてくださる企画の精神に、受益者を思う皆さんの思いが感じられました。
誰でも、自分が「支援される」とは思いもよらないもの。立場を下に見られる、というイメージも付きまとい、人によってはその言葉があるために素直に受けられないこともあるでしょう。これは、コロナに負けずに頑張っている人へ贈るクリスマスプレゼント。本当の支援とは、相手の気持ちを考えられること、なのかもしれません。
こうした活動がメディアに取り上げられたほか、日々の情報発信の効果もあって、フードバンクさがの認知度は向上し、「問い合わせも増えました」と石原さん。今後も寄贈を受けた食品が「どうしたら有効に使われるか」を考慮しながら、皆さんの取り組みは続いていきます。
国際目標であるSDGsでは、2030年に一人当たりの食品ロスを半減する目標が設けられました。食品ロスは、使用されることで県内に循環をもたらします。
干潟さんたちの活動に、さらなるご支援をよろしくお願いいたします。メッセージボードによると「特にお米は助かります」とのこと。実施中のふるさと納税も合わせてご検討ください。